無題
仏像とは仏がこの世に具現した姿である。仏は死者を導き生者を救い、悪を懲らしめる存在である。ならば、仏像とヒーローフィギュアの間に大した差はない。
私たちは願いを込めて神社の神さまに祈りを捧げ、救いを求めてお寺の本尊に手を合わせ、境内の絵馬にさまざまな願いを任せている。
誰もが現状を打開し、夢見る先の世界を望んでいるのだ。
願いを叶えたい。力がほしい。望んだ結果になりたい。
努力すれば叶うかもしれないし、神頼みしないとやっていられない願いもあるだろう。
願いはともすれば煩悩である。仏さまに祈ったところで、叶うどころか解消しかねないし、神さまには神罰を下されるかもしれない。それでも人智を越えた神仏の後押しがほしいのだ。そうまでして夢見る望みがあるのだ。そんなどうしようもないピンチをすくってくれるかもしれない仏さまを模した、形ある仏像は、やっぱりヒーローだ。
多くの手で僕を助けて。
憤怒の形相で僕を困らせる障壁を取り除いて。
今日も私は、訳はなくとも願いを込めて仏像に手を合わせる。
杉山